Master of Magic 2 と FfH2 開発者の動向について
『ファンタジー4Xストラテジーの近況、暗黒時代にさす僅かな光明』
私がAge of Wonders 3を卒業してからもうすぐ三年が過ぎようとしています。その間、様々なファンタジー4Xストラテジーゲームを遊んできました。DominionsシリーズやDeity Empires、Warlock2のRenaissance Mod、そして開祖Master of MagicのリメイクであるCaster of Magicにも出会えました。そのどれもが傑作として疑いようはありませんが、いずれも個人開発の域を出ていない小規模のインディーゲームである事も確かです。

AoW3のTriumph Studiosがファンタジーから去ってしまった時、私は次のようなコメントを残していました。「ファンタジー4Xストラテジーにとっては長い長い暗黒時代が始まったのかもしれません…」そして今、その予想は見事に的中し、ファンタジーテーマで4Xストラテジーゲームを開発する中規模以上のデベロッパーがほぼ存在しません。唯一話題を提供しているのはインディー開発者だけという暗黒時代が数年続いている状況なのです。
我々は今だ出口が見えない暗やみの中ですが、そこに僅かにさし込む希望の光が二つあるのでここで紹介しておきます。
一つ目は、有名なCiv4のファンタジーMod 「Fall from Heaven 2 」のメイン開発者であるKael氏(本名はDerek Paxton)の動向です。彼はFfH2の後にStardock というゲーム開発会社に所属し Elemental: Fallen Enchantress というゲームのリードデザイナを務めました。 Stardock はその後 Sorcerer King という一風変わった4Xゲームを出しますが大きな評価を得る事は出来ませんでした。そしてファンタジーテーマのゲームについては「コストに見合うリターンが得られ無いので撤退した」というようなニュアンスのコメントが数年前の開発者インタビューで確認されていました。
ところがここに来て、 StardockのCEOであるBrad Wardell氏から驚くべき発言が飛び出したのです。それはFallen Enchantress: Legendary Heroes のSteamフォーラムでの事でした。発言の要旨は以下の通りです。
1) StardockはFallen Enchantressの完全な続編を開発したいと考えている事
2) その続編の中心人物となるKael氏は現在 GalCiv IVの担当をしている事
3) GalCiv IVの開発が終了した後にKael氏がファンタジーゲームを作れることを約束した事
Fallen Enchantress: Legendary Heroes(FELH)を遊べばわかりますが、Stardockは非常に丁寧にゲームを開発する会社だと思います。その会社でKael氏が再びFallen Enchantressの続編(それはFfH2のスタンドアロン版開発の復活を意味する)のようなゲームを作るのであれば、これは期待作以外の何物でもありませんね!
とはいえ、GalCiv IV - Galactic Civilizations 4 はまだ開発段階のゲームです。このプロジェクトが完全に終了するのには、恐らく3、4年はかかると予想されます。気長に待つとしましょう。

さて、もう一つの光明。それはもちろん Master of Magic の正式な続編 Master of Magic 2 の開発です。
MoMの版権を獲得したゲームパブリッシャーであるスリザリン(Slitherine)が、これまでに見せたMoM2に対する唯一の動きは、代理人を通じたユーザーフォーラム上でのアンケートだけです。このアンケートはMoM2のマップがこれまで通りスクエア(四角形)が良いかHex(六角形)が良いか?という単純な物でした。それ以降、スリザリンからはMoM2に関する具体的な動きは一切公表されていません。
しかし、スリザリンに関しては、その周辺で間違いなくMoM2に関連するであろう大きな出来事が起っています。その経過について、以下に順を追って説明しましょう。
2019年8月4日
スリザリンがMoMの版権獲得とフランチャイズの続編開発を示唆。
2019年10月8日
MoM2に関する代理人を通じたアンケート実施。
2020年2月25日
Caster of Magicがリリース。
2021年4月22日
Caster of Magic for Windowsがリリース。

Caster of Magic(CoM)の詳細についてはこちらのレビューを読んで頂くとして、ここで重要なのはCoMをたった一人で開発しているSeravy氏という人物です。1994年にリリースされた元祖MoMは開発者が居なくなってからも熱狂的なファンによって改良が続けられてきました。コミュニティーパッチと呼ばれるこの改良は、ソースコードが存在しないMoMゲームを逆コンパイルする事で実現されていました。そんな改良コミュニティーのメンバーの一人だったSeravy氏がMoMを一から作り直し、新しくブランド名を与えたのがCoMというゲームになります。
重要なポイントとしては、2020年2月25日にリリースされたCoMのパブリッシャーがMoMの版権を有するスリザリンである事です。つまり、Seravy氏はスリザリンと何らかの契約を行い、それまでは単なるユーザー作成の改造ModであったCoMを、MoMフランチャイズの公式製品として販売したという事になるわけです。
続いて、2021年4月22日リリースのWindows版CoMです。MoMはWindowsの一つ前のOSであるMS-DOS向けのプログラムであった為、CoMもWindows上で仮想的にMD-DOSを動かすエミュレーターを使って無理やり動作させていました。その仕組みをすべて捨て、Windows向けにゼロからソースコードを書いて開発したのが、このWindows版CoMの名前の意味するところです。
実は開発が始まった当初はこのゲームはCaster of Magic 2と呼称されていました。どういうわけかリリースのタイミングでWin版CoMという名前に変更されたのでした。「ゼロからソースコードを書いて」と簡単に書いていますが、大傑作とされているMoMをソースコードも存在しない中でWindowsへ綺麗に移植する事が簡単に出来るわけがありません。しかし、実際に触ってみた私の感覚ではそれは成功していると思います。Seravy氏の技術力は恐らくずば抜けて高いのでしょう。
Win版CoMは、単にCoMをWindowsに移植しただけでは無く、これまでできなかった大きな変更も行っています。主なものとしては、ライバルAI数が4から13へ大きく増加。マップサイズの選択肢の追加。ゲームに特殊ルールを与えるオプション。AIの強化。呪文の追加などがあります。一方でゲーム画面の解像度は25年前の320x200から変化なく、グラフィックスなども過去作とまったく同じデータが流用されています。というわけで、Windows版と言えども、ビジュアル面に関しては非常に古臭い印象を与えるレトロ風のゲームとなっています。しかしゲームシステムに関してはCoMを継承しており、MoMを知り尽くした開発者によってさらに理想的なものへ進化して行ける素材である事は間違いありません。これらすべての開発は現在もSeravy氏ただ一人の手によって行われているように見受けられます。

スリザリンはMoM2の開発を裏で進行させる一方で、Win版CoMというMoMのコミュニティーからも高い評価を受けている「画面はレトロだがシステムは最先端の類似ゲーム」の販売も平行して行っているというのが現在の歪な状態なのです。
ここからは私の個人的な意見になりますが、Seravy氏と同じレベルでMoMを熟知し、かつゲームデザインの指揮もとれる人材を他に見つけてくることはハッキリ言って不可能だと思います。であるならば、現在のWin版CoMをMoM2のシステムのベースとして採用し、MoM2の実体として、CoMのビジュアルやUIだけを最先端にグレードアップするスキンのようなものを開発する事を私は提案します。現在の状況を考えれば、それ以外の選択肢は非現実的でリスクが高いように私には思えるのです。CoMをベースにできれば、それは洗練されたMoMの続編になる事は間違いありません。話が前後しますが、2019年10月8日にMoM2に関するアンケートの代理人を務めたのは何を隠そうこのSeravy氏だったのであります。彼がMoM2にもそう遠くないポジションに居る事が想像できます。
もちろん、Win版CoMはまだリリースされたばかりなので、細かいバグなども残っています。しかし、MoMのコミュニティーからの支持は確実に得られているように見えます。この流れに乗ってMoM2をリリースすれば極端に大きな失敗になる事は無いでしょう。そういう妥当な判断、クレバーな選択をスリザリンがしてくれることを祈ってこの記事を締めくくらせて頂きます。
ちなみに、5月11日にはこの動向が注目されるスリザリンの新作発表イベントが予定されています。今、世界的に見ても唯一この分野にお金を投資してくれそうなのは Fantasy General 2で成功してるスリザリン以外には見当たりません。このイベントでMaster of Magic 2が正式に発表される可能性もあります。私の希望通りの選択をしてくれるのか!?興味のあるかたは注目してみてください!
Slitherine's Home of Wargamers 2021 Live+
私がAge of Wonders 3を卒業してからもうすぐ三年が過ぎようとしています。その間、様々なファンタジー4Xストラテジーゲームを遊んできました。DominionsシリーズやDeity Empires、Warlock2のRenaissance Mod、そして開祖Master of MagicのリメイクであるCaster of Magicにも出会えました。そのどれもが傑作として疑いようはありませんが、いずれも個人開発の域を出ていない小規模のインディーゲームである事も確かです。

AoW3のTriumph Studiosがファンタジーから去ってしまった時、私は次のようなコメントを残していました。「ファンタジー4Xストラテジーにとっては長い長い暗黒時代が始まったのかもしれません…」そして今、その予想は見事に的中し、ファンタジーテーマで4Xストラテジーゲームを開発する中規模以上のデベロッパーがほぼ存在しません。唯一話題を提供しているのはインディー開発者だけという暗黒時代が数年続いている状況なのです。
我々は今だ出口が見えない暗やみの中ですが、そこに僅かにさし込む希望の光が二つあるのでここで紹介しておきます。
一つ目は、有名なCiv4のファンタジーMod 「Fall from Heaven 2 」のメイン開発者であるKael氏(本名はDerek Paxton)の動向です。彼はFfH2の後にStardock というゲーム開発会社に所属し Elemental: Fallen Enchantress というゲームのリードデザイナを務めました。 Stardock はその後 Sorcerer King という一風変わった4Xゲームを出しますが大きな評価を得る事は出来ませんでした。そしてファンタジーテーマのゲームについては「コストに見合うリターンが得られ無いので撤退した」というようなニュアンスのコメントが数年前の開発者インタビューで確認されていました。
ところがここに来て、 StardockのCEOであるBrad Wardell氏から驚くべき発言が飛び出したのです。それはFallen Enchantress: Legendary Heroes のSteamフォーラムでの事でした。発言の要旨は以下の通りです。
1) StardockはFallen Enchantressの完全な続編を開発したいと考えている事
2) その続編の中心人物となるKael氏は現在 GalCiv IVの担当をしている事
3) GalCiv IVの開発が終了した後にKael氏がファンタジーゲームを作れることを約束した事
Fallen Enchantress: Legendary Heroes(FELH)を遊べばわかりますが、Stardockは非常に丁寧にゲームを開発する会社だと思います。その会社でKael氏が再びFallen Enchantressの続編(それはFfH2のスタンドアロン版開発の復活を意味する)のようなゲームを作るのであれば、これは期待作以外の何物でもありませんね!
とはいえ、GalCiv IV - Galactic Civilizations 4 はまだ開発段階のゲームです。このプロジェクトが完全に終了するのには、恐らく3、4年はかかると予想されます。気長に待つとしましょう。

Slitherineがファンタジー4Xストラテジーの開祖『Master of Magic』の版権取得を発表。続編の開発を示唆。日本でも『シヴィザード(PS版)』として知られる伝説の傑作4Xストラテジー!その続編が開発されることになりました!https://t.co/mEoMhE588n
— 雅Miyabi✨古典ファンタジー (@fantasy_miyabi) September 4, 2019
さて、もう一つの光明。それはもちろん Master of Magic の正式な続編 Master of Magic 2 の開発です。
MoMの版権を獲得したゲームパブリッシャーであるスリザリン(Slitherine)が、これまでに見せたMoM2に対する唯一の動きは、代理人を通じたユーザーフォーラム上でのアンケートだけです。このアンケートはMoM2のマップがこれまで通りスクエア(四角形)が良いかHex(六角形)が良いか?という単純な物でした。それ以降、スリザリンからはMoM2に関する具体的な動きは一切公表されていません。
しかし、スリザリンに関しては、その周辺で間違いなくMoM2に関連するであろう大きな出来事が起っています。その経過について、以下に順を追って説明しましょう。
2019年8月4日
スリザリンがMoMの版権獲得とフランチャイズの続編開発を示唆。
2019年10月8日
MoM2に関する代理人を通じたアンケート実施。
2020年2月25日
Caster of Magicがリリース。
2021年4月22日
Caster of Magic for Windowsがリリース。

Caster of Magic(CoM)の詳細についてはこちらのレビューを読んで頂くとして、ここで重要なのはCoMをたった一人で開発しているSeravy氏という人物です。1994年にリリースされた元祖MoMは開発者が居なくなってからも熱狂的なファンによって改良が続けられてきました。コミュニティーパッチと呼ばれるこの改良は、ソースコードが存在しないMoMゲームを逆コンパイルする事で実現されていました。そんな改良コミュニティーのメンバーの一人だったSeravy氏がMoMを一から作り直し、新しくブランド名を与えたのがCoMというゲームになります。
重要なポイントとしては、2020年2月25日にリリースされたCoMのパブリッシャーがMoMの版権を有するスリザリンである事です。つまり、Seravy氏はスリザリンと何らかの契約を行い、それまでは単なるユーザー作成の改造ModであったCoMを、MoMフランチャイズの公式製品として販売したという事になるわけです。
続いて、2021年4月22日リリースのWindows版CoMです。MoMはWindowsの一つ前のOSであるMS-DOS向けのプログラムであった為、CoMもWindows上で仮想的にMD-DOSを動かすエミュレーターを使って無理やり動作させていました。その仕組みをすべて捨て、Windows向けにゼロからソースコードを書いて開発したのが、このWindows版CoMの名前の意味するところです。
実は開発が始まった当初はこのゲームはCaster of Magic 2と呼称されていました。どういうわけかリリースのタイミングでWin版CoMという名前に変更されたのでした。「ゼロからソースコードを書いて」と簡単に書いていますが、大傑作とされているMoMをソースコードも存在しない中でWindowsへ綺麗に移植する事が簡単に出来るわけがありません。しかし、実際に触ってみた私の感覚ではそれは成功していると思います。Seravy氏の技術力は恐らくずば抜けて高いのでしょう。
Win版CoMは、単にCoMをWindowsに移植しただけでは無く、これまでできなかった大きな変更も行っています。主なものとしては、ライバルAI数が4から13へ大きく増加。マップサイズの選択肢の追加。ゲームに特殊ルールを与えるオプション。AIの強化。呪文の追加などがあります。一方でゲーム画面の解像度は25年前の320x200から変化なく、グラフィックスなども過去作とまったく同じデータが流用されています。というわけで、Windows版と言えども、ビジュアル面に関しては非常に古臭い印象を与えるレトロ風のゲームとなっています。しかしゲームシステムに関してはCoMを継承しており、MoMを知り尽くした開発者によってさらに理想的なものへ進化して行ける素材である事は間違いありません。これらすべての開発は現在もSeravy氏ただ一人の手によって行われているように見受けられます。

スリザリンはMoM2の開発を裏で進行させる一方で、Win版CoMというMoMのコミュニティーからも高い評価を受けている「画面はレトロだがシステムは最先端の類似ゲーム」の販売も平行して行っているというのが現在の歪な状態なのです。
ここからは私の個人的な意見になりますが、Seravy氏と同じレベルでMoMを熟知し、かつゲームデザインの指揮もとれる人材を他に見つけてくることはハッキリ言って不可能だと思います。であるならば、現在のWin版CoMをMoM2のシステムのベースとして採用し、MoM2の実体として、CoMのビジュアルやUIだけを最先端にグレードアップするスキンのようなものを開発する事を私は提案します。現在の状況を考えれば、それ以外の選択肢は非現実的でリスクが高いように私には思えるのです。CoMをベースにできれば、それは洗練されたMoMの続編になる事は間違いありません。話が前後しますが、2019年10月8日にMoM2に関するアンケートの代理人を務めたのは何を隠そうこのSeravy氏だったのであります。彼がMoM2にもそう遠くないポジションに居る事が想像できます。
もちろん、Win版CoMはまだリリースされたばかりなので、細かいバグなども残っています。しかし、MoMのコミュニティーからの支持は確実に得られているように見えます。この流れに乗ってMoM2をリリースすれば極端に大きな失敗になる事は無いでしょう。そういう妥当な判断、クレバーな選択をスリザリンがしてくれることを祈ってこの記事を締めくくらせて頂きます。
ちなみに、5月11日にはこの動向が注目されるスリザリンの新作発表イベントが予定されています。今、世界的に見ても唯一この分野にお金を投資してくれそうなのは Fantasy General 2で成功してるスリザリン以外には見当たりません。このイベントでMaster of Magic 2が正式に発表される可能性もあります。私の希望通りの選択をしてくれるのか!?興味のあるかたは注目してみてください!
Slitherine's Home of Wargamers 2021 Live+
スリザリン新作発表の日本時刻は 5/11の25時のようです。少し頑張れば生で見られますね👀 pic.twitter.com/nZkuQmYBld
— 雅Miyabi✨古典ファンタジー (@fantasy_miyabi) May 8, 2021
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