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カドルステイト物語 第一部『盗賊の掟』レビュー

ファンタジー小説 カドルステイト物語 第一部『盗賊の掟』を読み終わりましたのでレビューをお届けします。



私がこの小説と出会ったきっかけはTwitter検索でした。日頃から自分の趣味に合わせて色々なキーワードでTwitter上を検索しているのですが「ドラゴンランス」というキーワードで守下さん(著者)のつぶやきを見つけたのです。子供時代にD&Dで遊び、また当時流行っていたファンタジー小説を読んだという行動が自分と同じで年代も近そうということで親近感を持ちました。その方が小説を書かれている事、そしてその内容が今や世間では殆ど陽の目を見なくなってしまった私の大好物「正統派ファンタジー」と知れば、これは読むしかないでしょう。

自分が最近読んだファンタジー小説としては、ダークエルフ物語から続いてアイスウィンドサーガがあります。凄い勢いで読み切ったダークエルフ物語初期三部作とはうって変わって、実はアイスウィンドサーガはなかなか読み進むスピードが上がりませんでした。そしてついに第四巻「暗黒竜の冥宮」の最初で読むのをやめてしまっていました。自分でもなぜ読むのをやめてしまったのか?その理由はハッキリとはわかりませんでした。

さて、カドルステイト物語ですが、まず最初に我々の目に飛び込んでくるのは上記の表紙の絵ですね。騎士風の魅力的な女性です。日本では今ファンタジー小説というと、どういうわけか露出度の高い服を着た目のクリッとした女の子、いわゆる「萌え」ってやつですか?そういう絵の書いてある本という事に必然的になります。これについて自分は以前から不満の声を上げている人間の一人なのですが、何故そろいもそろってこういう絵になるのか?普通の大人が買い難い空気をわざわざ醸し出す必要があるのか?という事なんです。新人の若手作家ならまだしも、大御所と言えるような人が書いた小説でさえその影響を色濃く残しているのです。例えばライトノベルのはしりとも言っても良い「ロードス島戦記」が1988年刊行とすると、当時青年だった人でも今は四十代のよいオッサンになってるわけです。私は萌えが好きな人を否定するわけではありませんが、四十代でこういう絵の本を買う事に少し抵抗感がある「古き良きおっさん」も結構な数いるのではないかと思うのです。だから水野良氏のような大御所が書いた小説なら、宮本武蔵の五輪書みたいな表紙で出せばよいんじゃないか?と私は普段から提案しているのです!いや冗談のようで私は結構マジで言ってるんですよこれ(笑)

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水野氏のファンならこんな表紙でも買うんじゃなかろうか?

前置きが長くなりましたが、カドルステイト物語のこの「萌えじゃない感じの絵」はすぐに私のお気に入りとなったということです。カドルステイト物語も「カワイイ感じの女の子」だし「萌え」とそんなに変わらないじゃないか?という意見もあるかもしれませんが、そういう人はグランクレスト戦記に挟んであったこの折り込みチラシを見て、その目を焼き尽くされちゃってください(笑)

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ほれほれぇ!これでもか!これでもか!www

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グランクレスト戦記の絵は結構ギリギリの線を狙って頑張っていたのは認めますが…

何度も言いますがこういのが好きな人はそれでよいのです。私はその趣味を否定したいわけではありません。「偏り過ぎ」だという事が言いたいのです。ちなみにカドルステイト物語の絵を担当しているのはGPMさんというデザイナー兼イラストレーターの方だそうです。こういう雰囲気の絵、私は好きですね。こういう絵のファンタジー小説が現代の世に刊行されたというだけでも貴重なことだと思います。 

そろそろ本題に入りますが、基本的にネタバレはしませんので御安心ください。まずこの本の紹介文を以下に引用します。


毎年冬、山奥の村から大都会に出稼ぎに来ている若者デインとカータだったが、今年は戦争の影響で馴染みの仕事が殆ど無く、代わりに傭兵隊の募集ばかりが目立った。そんな中、戦火に巻き込まれる直前の街を専門に盗みに入るという義賊を名乗る盗賊団の募集が彼等の目に留まる。その盗賊団に入団した二人は、特殊な訓練を受けながら、来たる戦争に備えていた。そして様々な思惑が交錯する中、ついに連合と帝国の戦争が勃発する。主人公デインが、旅を決意するまでを描く、超長編ファンタジー小説第一弾。

著者のつぶやきを見るとこの本の元ネタは学生時代に作成した「TRPG用のシナリオ」であり、当時はD&Dのルールで遊んでいたとの事です。これを事前に知っていた私としては、世界観の前提は本を読む前からD&Dになりました。エルフやドワーフ入り混じる冒険者達が剣や魔法を操りドラゴンの守る財宝を目指して冒険に出るようなあのワクワクするような世界ですね。この本を読み始めると気付くのですが、確かに背景世界はD&Dポイ感じでしっかりと構築されているようです。しかしドラゴンはおろか魔法や人間以外の種族が出てくる気配はまったくありません。それもその筈で、この物語の主人公は冒険者ではなく出稼ぎの少年という普通の一般市民なのです。我々がゲームなどで良く見ている世界は、冒険者というある意味でこの世界の異端者達から見た視点なんだという事に改めて気付かされました。この世界で生活している一般市民にとって、ドラゴンなんていうのは半おとぎ話の世界であり、エルフやドワーフなんてのもそこらにホイホイ歩いている存在では無いのです。

そんな感じで序盤は人間の少年視点で淡々と話が進みます。淡々としていますが話の展開に無理がなく、また情景描写や状況説明などが繊細に書かれている為、私は飽きることなく読み進む事ができました。自分の頭の中にしっかりとした世界を思い描くことができたということです。

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著者の言葉を借りれば 「私が本来好きだった、美しい心理描写が描かれるファンタジーを殆ど見なくなってしまった事を憂いています。よくある現代と異世界の融合とかではなく、ダークファンタジーという訳でもなく、純粋なファンタジー小説です。人の汚い部分も容赦無く描きますが、どちらかと言えば、ファンタジー世界の美しさを表現したいと思って書きました。」 という正にこの通りで、先に書いたようなファンタジー固有ネタはかなり抑えられつつも、それ以外の部分は自分が期待していた通りの内容でした。そして読み終えた今、そういった固有ネタも今後十分期待できると感じています。魔法の存在も少し確認できました。神聖魔法による毒の治癒。物理攻撃魔法もあります。もしかしてエルフかな?と思われる人物描写もありました。ファンタジー小説と言われれば私はやはりそういう要素も期待していたので、正直これにはホッと胸をなでおろしました(^-^)

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地図をよく見るとエルフやドワーフといった文字を発見!やはり存在するようです。

話が進む中で、様々な部分にいくつかの太い伏線が張られているのをしっかりと感じることができるのも良かったです。そういう物が読者に楽しみを与えるのですね。全体として特に印象的なのはやはり表紙の女性と主人公との出会い、繊細に描かれる絡みですね。これは他の読者の方もきっと魅了されるでしょう。後半は戦闘が増えて派手になってくると同時に、一般人だった主人公がしっかりと主役に躍り出てきます。そして最後は一つの伏線の回収に向かって大いに盛り上がり、気になる沢山の伏線を残して終了。第一部として十分な内容だと思いました。

続きが早く読みたいなぁと思いつつ、この感情がどこから来るのかを考えると、それは強く印象付けられた伏線、謎を回収したいという欲求だという事がわかりました。そしてその時にふと気付いたことがありました。自分はアイスウィンドサーガの伏線を思い出すことができないのです。そうか、だから読むのをやめてしまったのですね。カドルステイト物語は読者を楽しませる要素をしっかりと持った作品だと思いました。

カドルステイト物語は、Kindle版の電子データを購入可能です。サンプルもあるのでファンタジー小説が好きな方にオススメします。また本の形でも手に取ることができます。リンクはこちらです。

これから第二部『贖罪の雫』、第三部『故郷の絆』、そして第四部『硝子の剣』と配信予定があり、全七部構成となるそうです。

守下尚暉さんとGPMさんが作り出すこの新しいファンタジーの世界。今後も楽しみです。

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剣と魔法の世界をテーマにした洋ゲーが好きです。ターン制4X ストラテジー/シミュレーション、D&Dの系譜モノ、小説などを紹介しています。ツイートやブログ記事にやたら(笑)や wwww が出てくるのは、好きなゲームの事を考えて常にニヤついてるからです(笑)ていうか、皆さんもニヤついてるでしょ?素直になろうよwww

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